EPS室
EPS室とは?

建物の外部から引き込まれた幹線ケーブルは、地下や1階の受変電設備から各フロアへ垂直に伸びている。この幹線の通り道を「EPS」(Electric Pipe Shaft)と呼び、各階でEPSから横方向へ配線を分岐させる接続部を保護する空間がEPS室である。
マンションやオフィスビル、病院、商業施設など、中高層の建物であれば一般的に設置されており、各階の同じ位置に縦に連続して配置される。平面図上では小さな区画として現れるが、建物の電気・通信インフラを支える拠点となっている。
室内には、電力幹線のケーブルラック、分電盤、弱電用の端子盤やケーブルトレイなどが収められる。近年は建物のIT化にともない、LAN配線や光ファイバー回線、監視カメラ用ケーブルなども収容されるようになっている。電力系と通信系の配線が混在するとノイズが発生する恐れがあるため、内部で空間を分けたり、用途ごとに別々のEPS室を設けたりする場合もある。
防火上の配慮も不可欠である。EPS室は上下階を垂直に貫通する構造であるため、火災時に炎や煙の通り道になる危険がある。これを防ぐため、配線貫通部の隙間は不燃材料で充填され、床・壁には耐火処理が施される。扉には施錠可能な防火戸が採用されるのが一般的で、一般利用者の立ち入りは制限される。設備の保守・点検は専門の作業員が行い、電気設備に不具合が生じた際もこの室を起点に調査や修繕が進められる。
設計時には将来の拡張性も考慮される必要がある。スペースが不足すると、増設や改修の際に新たな配線を追加できなくなるためである。スマートビル化が進む現代では通信・制御系の配線量が増加しており、EPS室に求められる容量は以前より大きくなっている。オフィスのテナント入れ替えやレイアウト変更、通信環境の増強を検討する際も、このEPS室の容量と配置が工事計画の出発点となる。