読み方 : ディーシーピー

DCP【Digital Cinema Package】

概要

DCPとは、デジタル映画館での商業上映に用いる、映像・音声・字幕などのデータを一定の形式でまとめたファイル群の標準規格。従来の35mmフィルムに代わる配給・上映の標準として策定され、現在では世界中の映画館に広く普及している。
DCPのイメージ画像

DCPを構成するファイルには、映像データ、音声データ、字幕データがある。映像は一般的な動画圧縮形式とは異なり、JPEG 2000形式の静止画像を一コマ(フレーム)ずつ並べたデータ列として表される。音声は非圧縮のリニアPCM形式で収録される。

これらは「MXF」(Material Exchange Format)と呼ばれるコンテナ形式に格納され、再生順序や字幕の表示タイミングなどを記述したプレイリストファイルと合わせて一つ映像パッケージとなる。映画館のデジタルシネマサーバはこのパッケージを読み込み、映像と音声を同期させてスクリーンに投影する。

解像度は2K(2048×1080ピクセル)と4K(4096×2160ピクセル)の2種類が規格化されており、上映設備に応じて使い分けられる。色空間には映画上映向けに最適化されたXYZ色空間色深度36ビット)が採用され、家庭用ディスプレイより広い色彩を表現できる。音声は5.1チャンネルや7.1チャンネルをはじめ、立体音響システムに対応した多チャンネル収録が可能である。

商業映画のDCPの多くはAESによる暗号化が施されており、そのままでは再生できない。配給会社は上映館ごとに「KDM」(Key Delivery Message)と呼ばれる暗号鍵ファイルを個別に発行し、指定した期間・設備でのみ復号・再生できるよう管理する。これにより、輸送中や保管時における不正コピーや期間外上映を技術的に防止している。

DCP規格の策定はハリウッドの主要スタジオが設立した業界団体DCI(Digital Cinema Initiatives)が主導し、2005年に最初の仕様が公開された。その後、映像関連の技術標準を策定するSMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers)が関連仕様を国際標準として整備し、現在はSMPTEの規格群が参照されている。

DCPの普及以前、映画配給は物理フィルムの複製と輸送に多大なコストを要していた。DCPへの移行により、可搬型のデータ記憶媒体や専用ネットワークを通じた配給が可能となり、配送コストの削減と迅速な展開が実現した。上映を繰り返しても画質が劣化しないことも、フィルムに対する実質的な優位点である。

(2026.6.7更新)
 
この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
1997年8月より「IT用語辞典 e-Words」を執筆・編集しています。累計公開記事数は1万ページ以上、累計サイト訪問者数は1億人以上です。学術論文や官公庁の資料などへも多数の記事が引用・参照されています。