CELP【Code Excited Linear Prediction】符号励振線形予測
概要

音声の波形をそのままデータ化するのではなく、声道の特性を表す「線形予測フィルタ」と、声帯の振動に相当する「励起信号」を組み合わせて音声を表現する。エンコーダは「コードブック」と呼ばれる参照表から、復元後の音声が元の音声に最も近くなる符号を探索し、その符号のみを送信する。
受信側は送られてきた符号をもとに同じモデルで音声を再構成するため、波形をそのまま送るよりも格段に少ないデータ量で自然な音声品質を維持できる。人間の発話に限れば8~16kbps(キロビット毎秒)程度の極めて低いビットレートでも実用的な品質を保つことができる。声以外の音楽や環境音のような様々な音の再現には向いておらず、汎用の音声圧縮方式としてはMP3やAACなど波形をそのまま圧縮する方式を用いるのが一般的である。
演算量を抑えた「ACELP」(Algebraic CELP)や、遅延を小さくした「LD-CELP」(Low-Delay CELP)など様々な派生方式が考案され、ITU-T G.729をはじめとする国際標準に採用された。携帯電話の音声コーデックや業務用デジタル無線でもACELP系の技術が広く利用されており、音質と圧縮効率の両立に貢献している。GSMやW-CDMA向けの「AMR」(Adaptive Multi-Rate)、CDMA2000向けの「EVRC」(Enhanced Variable Rate Codec)などもCELPの派生方式である。
CELPは1980年代半ばに考案され、当時限られていた通信回線の伝送容量の中で多くの利用者が同時に通話を行うための手段として導入が進んだ。デジタル携帯電話網の黎明期からVoIPの普及期に至るまで、少ないビット数でアナログ電話品質の音声を届ける圧縮技術として重宝された。近年では伝送容量の拡大が進み、汎用性が高く高音質のコーデックが普及しているが、計算資源や消費電力の制約が厳しい機器ではCELP系の方式が現役で用いられている。