BGPフルルート【BGP full route】

インターネットは「自律システム」(AS:Autonomous System)と呼ばれる独立したネットワーク単位が世界中で相互に接続されて成り立っている。AS同士は、BGP(Border Gateway Protocol)という通信規約(プロトコル)を通じて「どのネットワークへはどの方向へ転送すればよいか」という経路情報を交換し合う。BGPフルルートはこの経路情報をすべて集めたもので、インターネット全域をカバーする地図に相当する。
フルルートに含まれる経路数は、インターネットの拡大に伴って増え続けており、IPv4とIPv6を合わせると現在は百万件規模に達している。情報は秒単位で更新されるため、これを処理するには大容量のメモリと高い演算能力を備えたルータが必要である。機器の性能が不足していると受け取ること自体ができないため、導入前のハードウェア選定が不可欠となる。
フルルートを保持する利点は、経路選択の精度にある。複数の上位プロバイダと接続している環境では、宛先ごとにASパス長などの属性をもとに最適な転送先を自ら判断できる。障害発生時の迂回も迅速に行えるため、主にインターネットサービスプロバイダ(ISP)の境界ルータや大規模データセンターなどで採用されている。
一方、小規模なネットワークではフルルートを保持しない構成が一般的である。家庭や企業など通過トラフィックのないインターネット末端のネットワークでは、不明な宛先への通信をプロバイダへ委ねる「デフォルトルート」のみを設定する方式が一般的である。特定の経路だけを受け取る「パーシャルルート」という中間的な選択肢もあり、規模や運用体制に応じた使い分けが行われる。
フルルートの運用には、誤った経路情報の受信・広告を防ぐフィルタリング設定や、受け入れる経路数の上限設定といった対策も必要になる。一つのルータが誤情報を広範囲に広告すれば、大規模な通信障害につながる恐れがあるためである。高度な管理が求められる構成であることを踏まえ、必要性と運用能力を慎重に見極めた上で採用が判断される。