Auracast
Auracastとは?

従来のBluetooth音声伝送は、スマートフォンとワイヤレスイヤホンのように1対1でペアリングして伝送する仕組みが前提だった。Auracastではこの制約が取り除かれ、送信機から発信された信号を対応機器が任意に受信する放送型の通信方式が採用されている。
ラジオ放送に近い感覚で音声を周囲へ送信することができ、受信側はあらかじめペアリングをおこなう必要はない。Wi-Fiのネットワーク選択に似た操作で聴きたいチャンネルを選んで接続できる。QRコードをスキャンする方法も備わっており、施設の案内板にQRコードを掲示するだけで利用者を誘導することが可能である。
LE Audio規格で新たに採用された「LC3」(Low Complexity Communications Codec)という新しい音声圧縮技術(コーデック)が用いられる。従来Bluetoothで標準的に使われてきたのSBCなどのコーデックに比べ、少ないデータ量でも音質を維持しやすく、通信状態に応じた柔軟な品質調整が可能である。
Bluetooth Low Energy(BLE)を基盤としているため消費電力が小さく、補聴器のように電池容量に制約のある小型機器でも長時間の利用に対応できる。また、暗号化によって受信者を制限できる非公開モードも規定されており、公共向けの開放型と、特定の参加者だけに限定する閉鎖型を用途に応じて使い分けられる。
想定される利用場面は、空港や駅などでの案内放送、音声を出せない環境に設置されたテレビの音声共有、講演や国際会議での多言語通訳配信など公共的な空間での音声配信が中心である。補聴支援の分野でも注目されており、従来の磁気ループ設備に比べて導入コストが低く、雑音を排した明瞭な音声を補聴器や対応イヤホンへ直接届けられる。Auracast対応の補聴器があれば、専用の受信機なしに駅のアナウンスや劇場の音声を受信できる環境が整いつつある。
利用にあたっては、送信側と受信側の双方がLE AudioおよびAuracastに対応している必要があり、従来のBluetooth機器では利用できない場合がある。2020年代に登場した比較的新しい規格であり、現在は対応するスマートフォン、ワイヤレスイヤホン、補聴器、テレビなどの製品が順次市場に投入されている段階にある。