ARM版Windows【Windows on ARM】
ARM版Windowsとは?

ARMプロセッサの最大の特徴は消費電力の低さにある。発熱が抑えられるため冷却ファンを省きやすく、本体を薄く軽量に設計できる。バッテリー持続時間も長く、一度の充電で丸一日以上の駆動を実現した製品も存在する。スリープからの即時復帰やモバイルデータ通信への対応など、スマートフォン由来の利便性も取り込んでおり、外出先での利用に適した端末を作りやすい。
Microsoft社は2012年に「Windows RT」としてARM版Windowsを発売したが、アプリの制約が大きく、あまり普及しなかった。2017年に「Windows 10」でARM対応を再開した後、2020年に米アップル(Apple)社がMacへARMベースの自社チップ(Apple Silicon)を採用して高評価を得たことでARM版Windowsへの関心が高まった。2024年にはAI処理機能を強化したARM版「Copilot+ PC」がPCメーカー各社から発売され、普及がさらに加速している。
x86との互換性問題
Windowsは長年、実質的にx86系CPUのみに対応してきたため、既存の対応アプリケーションの大半もx86系を前提としており、互換性が課題となる。ARMとx86はCPUの命令語の仕様(命令セット)が異なるため、従来のソフトウェアをそのまま動かすには「エミュレーション」(emulation)、すなわち命令をリアルタイムに変換しながら実行する仕組みが必要となる。
現在のWindows 11では、32ビットx86対応アプリ、64ビットx86(x64)対応アプリをARM用に変換するエミュレーションに対応しており、既存の大半のアプリはそのまま実行することが可能となっている。ただし、命令変換の処理が加わる分だけ速度面での不利が生じる場合があり、古い周辺機器のデバイスドライバなどでARM未対応のケースも残る。
この状況を補うのが最初からARM向けに開発されたネイティブアプリである。エミュレーションを介さないため処理速度と電力効率の両面で有利となる。主要なWebブラウザやオフィスソフト、開発ツールでの64ビットARM(ARM64)ネイティブ対応が進み、実用性は着実に向上している。一方でドライバや一部の業務用ソフトウェアには対応の遅れも残るため、購入前に利用予定のソフトウェアとの互換性を確認することが求められる。