1000BASE-T1
概要

構内ネットワーク(LAN)で用いられる1000BASE-Tでは4対8本の銅線が必要であるのに対し、1000BASE-T1は1対2本の銅線のみで同等の速度を実現する。送信と受信を同じ配線上で同時に行う全二重通信方式を採用し、エコーキャンセル技術によって信号の干渉を処理している。
伝送距離はケーブルの種類によって異なり、自動車内での利用を想定した15メートル程度までの区分と、産業用途や大型商用車などを想定した40メートル程度までの区分が存在する。用途に応じてUTPケーブル(非シールドより対線)とSTPケーブル(シールド付きより対線)を使い分ける。
信号線の削減により、ケーブルやコネクタを小型・軽量化でき、車両全体の配線重量や配線スペースを抑えられる。自動車の車内は電磁ノイズや振動、温度変化が生じやすい環境であるため、これらの条件下でも安定して動作するよう設計されている。一般的なイーサネットと同じ上位プロトコルなどを利用でき、既存のネットワーク技術やソフトウェア資産を活用しやすい。
従来の車載ネットワークでは、「CAN」(Controller Area Network)や「LIN」(Local Interconnect Network)といった低速な通信規格が広く使われてきた。しかし、先進運転支援システム(ADAS)や高精細カメラ、ミリ波レーダー、LiDARなどの搭載が進むにつれて扱うデータ量が急増し、従来の規格では大容量データをリアルタイムに転送することが難しくなった。こうした事情から、オフィス環境で実績のあるイーサネット技術を車載向けに最適化したこの規格が策定された。
自動車業界では「ゾーンアーキテクチャ」(zone architecture)と呼ばれる電子制御システムの設計思想が広がりつつあり、各ゾーンと中央コンピュータを結ぶバックボーン通信として1000BASE-T1が採用される例も見られる。産業分野では、工場の製造ラインやロボット制御など、リアルタイム性と高速性が求められる環境での活用が進んでいる。