集合知【wisdom of crowds】collective intelligence
集合知とは?

一人一人の個人は、それぞれ異なる背景、経験、専門性を持ち、判断には誤りや偏りが混じる。しかし、多様な視点を持つ人々が互いに影響されず独立して判断し、その結果を適切に集計・総合すると、個々の誤りが打ち消し合い、全体として正確な答えに近づくことがある。
1906年にイギリスの統計学者フランシス・ゴルトン(Sir Francis Galton)が行った「牛の体重当て」の実験では、約800人の一般参加者の予想値の中央値が実際の体重にきわめて近い値となった。専門家でなくとも、多くの人の判断を集めることで高い精度が得られることを示した事例として広く知られている。
インターネットの普及により、集合知は日常的な規模で機能するようになった。ウィキペディア(Wikipedia)では世界中の匿名の執筆者が記事を作成・修正し合い、膨大な記事数の百科事典が形成されている。オープンソースソフトウェアの開発では、世界各地の開発者が自発的にコードを持ち寄り改善を重ねる。
商品やサービス、店舗などに対する消費者によるレビューも、一件ずつは個人の主観や感想に過ぎないが、多数が集積することで客観的な指標に近い信頼性を帯びることがある。将来の出来事に金銭を賭ける予測市場では、参加者が持つ断片的な情報が価格に反映され、精度の高い未来予測が可能になることが知られている。
集合知が有効に機能するには条件がある。参加者の多様性が確保されていること、特定の意見に同調せず独立して思考していること、そして、分散した知見を集約する仕組みが整っていることが必要である。参加者が同質な集団であったり、声の大きい人物に引きずられて意見が一方向に偏ったりすると、集団の判断は個人より劣る結果を招くこともある。意図的な誤情報の混入や感情的な判断の拡散も、集合知の精度を損なう要因となるため、情報の信頼性を検証する仕組みや、異なる意見が表明されやすい環境の整備が求められる。