読み方 : りょうしちょうえつせい

量子超越性【quantum supremacy】

概要

量子超越性とは、量子コンピュータが特定の計算において、従来の古典コンピュータでは現実的な時間内に解けない問題を解ける状態、またはその能力を実証したことを指す概念。量子コンピューティング研究の重要な到達目標の一つとして位置付けられている。
量子超越性のイメージ画像

量子コンピュータは量子力学の原理を利用して情報を処理する。従来のコンピュータが「ビット」を単位として「0」か「1」のいずれかで情報を扱うのに対し、量子コンピュータは「量子ビット」(quantum bit)を用いる。量子ビットは重ね合わせにより0と1の状態を同時に持てるほか、複数の量子ビットが相互に関係する「量子もつれ」状態も利用できる。こうした性質により、特定の問題では古典コンピュータとは根本的に異なる計算手法が可能となる。

量子超越性は2012年に物理学者ジョン・プレスキル(John Preskill)が提唱した概念で、量子コンピュータが特定の問題について古典コンピュータに対して性能上の優位が確認された状態を指す。これはあらゆる計算や処理で優れることを意味するものではなく、文章作成や3Dグラフィック生成といった一般的な用途で量子コンピュータが従来機を置き換えるものではない。

この概念が広く知られるようになったのは2019年のことである。米グーグル(Google)社は量子プロセッサ「Sycamore」を用いた実験で、世界最速の古典スーパーコンピュータが約1万年かかる計算をわずか200秒で完了したと発表し、量子超越性の達成を主張した。ただし、米IBM社はその後、古典コンピュータでも同等の計算が数日程度で可能だと反論しており、達成の時期や定義をめぐる議論は続いている。また、実験に使われた「ランダム量子回路サンプリング」は人工的な問題であり、現実の業務や科学的課題に直接応用できるものではない。

量子超越性の達成は、量子コンピュータが実用的な価値を持つことの証明とは異なる。実社会への応用には、誤り訂正技術の確立や量子ビット数の増加、計算精度の向上など多くの課題が残る。近年では量子超越性と並んで、量子コンピュータが実際の産業や科学研究で有用な問題を効率的に解けるかという観点も重視されるようになっている。

(2026.6.10更新)
 
この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
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