読み方 : りょうしアニーリング

量子アニーリング【quantum annealing】量子焼きなまし法

概要

量子アニーリングとは、量子力学の性質を利用して組み合わせ最適化問題を高速に解く計算手法。物流の配送ルートや金融ポートフォリオの選定など、膨大な選択肢の中から最適な組み合わせを探索する処理に応用できる。
量子アニーリングのイメージ画像

組み合わせ最適化問題は、選択肢の数が増える程組み合わせの総数が爆発的に増加し、従来のコンピュータでは現実的な時間内に最適解を求めることが難しくなる。量子アニーリングはこうした問題に特化した計算方式である。

解きたい問題をエネルギーが最も低い状態を求める問題に変換し、その状態を量子ビットで表現する。量子的な揺らぎを徐々に弱めながら状態を変化させ、最終的にエネルギーが最も低い状態に収束させることで、最適解に近い解を導き出す仕組みである。

この仕組みは、金属を加熱した後ゆっくり冷やすと原子が安定した配置に落ち着く「焼きなまし」という現象を模したものである。基礎となるのは「量子トンネル効果」で、より良い解を探す途中で一度悪い解を経由する必要がある場合でも、エネルギーの壁をすり抜けるようにして別の状態に移ることができ、局所的な解に留まりにくくなる。

量子アニーリングは、量子コンピュータの実現方式の一つである。量子コンピュータには主に「量子ゲート方式」と「量子アニーリング方式」の二つの系統があり、前者は汎用的な計算を目指すのに対し、後者は組み合わせ最適化問題に用途を絞った方式となっている。この理論は東京工業大学の西森秀稔教授らが1998年に提唱し、カナダのD-Wave Systems社が2011年に世界初の商用機として実用化した。組み合わせ最適化問題に用途を絞ったことで、汎用型の量子コンピュータより先行して実用化が進んだ。

量子アニーリングの計算結果は確率的なものであり、同じ問題を繰り返し計算しても毎回同じ解が得られるとは限らない。実用上は複数回の計算結果から最も良い解を選び出す方法が取られることが多い。また、専用のハードウェアだけでなく、通常のコンピュータ上で量子アニーリングの考え方を模倣する「疑似量子アニーリング」と呼ばれるアルゴリズムも考案されている。

(2026.6.30更新)
 
この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
1997年8月より「IT用語辞典 e-Words」を執筆・編集しています。累計公開記事数は1万ページ以上、累計サイト訪問者数は1億人以上です。学術論文や官公庁の資料などへも多数の記事が引用・参照されています。