読み方 : にんちバイアス

認知バイアス【cognitive bias】

認知バイアスとは?

人間が情報を判断・処理する際に生じる、思考や認識の系統的な偏りのこと。客観的な事実や論理ではなく、先入観、感情、過去の経験などに引きずられた結論を導いてしまう心理的傾向を指す。
認知バイアスのイメージ画像

人間の脳は膨大な情報を瞬時に処理するため、経験則や直感に頼ったショートカット思考(ヒューリスティクス)を多用する。認知バイアスはこの仕組みの副産物であり、迅速な判断を可能にする反面、意思決定の精度が求められる場面では誤った結論を招くことがある。これは本人が意識しないまま生じることが多い。

代表的な例として、自分の信念や仮説に合う情報だけを集め、矛盾する情報を軽視する「確証バイアス」(confirmation bias)がある。最初に提示された数値や情報に過度に引きずられる「アンカリング効果」(anchoring effect)、集団の多数意見に同調しやすい「多数派同調バイアス」(majority synching bias)なども広く知られる。

ビジネスの現場では、認知バイアスはプロジェクトの失敗兆候の見落としや、採用・人事評価における不公平な判断といった実害につながることがある。IT分野では、開発者が自分の設計方針を過信することで不具合を見落とす場合や、利用者がフィッシング詐欺に気付きにくくなる場合がある。また、機械学習の学習データに偏りがあると、モデルの判断結果にも偏向が生じる。これは「アルゴリズムバイアス」として区別されることもある。

認知バイアスの概念は、心理学者ダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)とエイモス・トベルスキー(Amos Tversky)が1970年代に発表した一連の研究で体系化された。カーネマンはその後ノーベル経済学賞を受賞し、人は必ずしも合理的に行動しないという前提に立つ行動経済学の発展に寄与した。現在では心理学や経済学、医療、ITなど様々な分野で認知バイアスの影響が議論されている。

この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
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