第二次AIブーム
概要

1950年代に始まる第一次AIブームの終息後、1970年代には人工知能研究への期待は低下した。しかし、1980年頃からコンピュータの性能向上とともに再びAI研究への期待が高まり、第二次AIブームが始まった。この時期の中心的な技術は「エキスパートシステム」である。
これは、特定分野の専門家が持つ知識や判断規則をコンピュータに登録し、それらの知識を用いて問題解決や診断を行うシステムである。人間の専門家が行う推論過程を形式的なルールとして記述し、条件に応じて結論を導く推論エンジンによって処理を行う仕組みである。
この技術は医療診断、化学分析、機械の故障診断、金融分野の意思決定支援などさまざまな分野で研究された。例えば、医療分野では、症状や検査結果をもとに病気の可能性を推定するシステムが開発され、化学分野では分子構造の解析を支援するプログラムが作られた。また、企業の業務システムでも、専門知識を活用した意思決定支援ツールの導入が検討されるようになった。こうした応用により、人工知能が実際の社会で役立つ技術として認識されるようになった。
また、この時期には「知識工学」(knowledge engineering)と呼ばれる研究分野も発展した。人間の知識をどのように整理しコンピュータに表現するかを研究する分野であり、エキスパートシステムの構築に重要な役割を果たした。日本では1980年代に国家プロジェクトとして「第五世代コンピュータ」計画が進められた。論理推論を重視した新しい計算機の研究が行われ、AI研究への関心と期待が高まった。
しかし、1990年代に入ると、エキスパートシステムの開発には膨大な知識の入力が必要であり、知識の更新や維持が困難であるという問題が明らかになった。また、現実の問題は対象分野の閉じた知識やルールの適用で解けるとは限らず、人間が無意識のうちに身につけた「常識」のような暗黙的な知識がなければうまく対応できない状況が多数あることが次第に分かってきた。こうした背景から、この時期のAIシステムは当初期待されたほどには広範な応用や発展に至らず、AI研究への過度な期待が再び縮小し、第二次AIブームは次第に終息していった。