第三次AIブーム
概要
第三次AIブームの背景には、いくつかの技術的要因がある。まず、インターネットやスマートフォンの普及によって膨大なデータが蓄積されるようになったことが挙げられる。人工知能、とりわけ機械学習は大量のデータから規則性や特徴を学習する技術であるため、「ビッグデータ」と呼ばれる大規模データの存在や、研究に利用できるオープンなデータセットの整備はAIの性能向上に大きく寄与した。また、計算能力の高いGPUなどのハードウェアが広く利用されるようになり、大量のデータを高速に処理できる環境が整ったことも重要な要因である。
機械学習技術の発展
この時期の中心的な技術はコンピュータが学習データからパターンを学ぶ「機械学習」技術の一つである「ニューラルネットワーク」と「ディープラーニング」である。人間の脳に着想を得た人工ニューラルネットワークのアイデア自体は1950年代の初期のAI研究の頃から存在するが、計算機の性能上の制約などから極めて単純な実証モデルしか作ることができなかった。
ディープラーニングは多層構造のニューラルネットワークを用いてデータの特徴を自動的に学習する手法で、1980年代後半に考案された「誤差逆伝播法」(バックプロパゲーション)により、実用的なモデルを構築できる可能性が開かれた。それまでのAIでは人間が特徴量を設計していたが、ディープラーニングでは大量の学習データを与えるだけで重要な特徴を自動的に抽出することが可能となり、画像認識などの分野で人間に近い性能を達成する例が報告されるようになった。
生成AIの発展と普及
2010年代には「大規模言語モデル」(LLM)など、人間の指示に基づいて新たに情報を作成して出力することができる「生成AI」が実用化された。AI技術の応用範囲も大きく広がり、検索エンジンや広告配信、音声アシスタント、翻訳サービス、医療画像診断、金融の不正検知、自動運転技術など、多様な分野でAIが利用されている。
企業の業務システムでも、データ分析や意思決定支援のためにAIが導入されるケースが増えている。クラウドコンピューティングの発展により、高度なAI機能をインターネット経由のサービスとして利用できる環境も整備された。プログラミングやコンピュータ上での事務作業など一部の業務では、人間に代わってAIエージェントに作業を行わせる事例も急激に増えている。
課題や懸念
一方、第三次AIブームでは、性能や実用性の高さ故に生じる、これまでにない課題も指摘されている。ディープラーニングは高い性能を示す一方で、学習に大量のデータと計算資源を必要で、世界に数社程度の一握りの巨大事業者でなければ開発・運用を行うことができず、寡占化や独占化が心配されている。また、なぜその判断に至ったのかを人間が理解しにくい「ブラックボックス性」や、学習データの偏りによる判断の偏りや倫理的問題、プログラミングに代表される実用的な知的作業の能力によって人間の雇用が代替され失業者が増える問題など、今までにない新たな問題や課題が生じている。
人間と同等の知性を持つとされる「汎用人工知能」(AGI:Artificial General Intelligence)や、人間を超える知能を持つ存在と予想される「人工超知能」(ASI:Artificial Superintelligence)の登場も間近であると予想する専門家もおり、人間並の知能を持ったAIと人間社会がどのように共存していけばよいのかという、今まで人類の経験したことのない課題と向き合わなければならなくなる可能性が高まっている。
