読み方 : ぶつりふくせいこんなんかんすう

物理複製困難関数【PUF】Physically Unclonable Function

物理複製困難関数とは?

半導体チップの製造時に生じる微細なばらつきを利用し、製品個体ごとに異なる応答を得る仕組み。同じ設計で作られた装置でも内部の物理的差異により結果が変わるため、装置固有の「指紋」のように扱うことができ、識別や認証に用いられる。
物理複製困難関数のイメージ画像

半導体回路の配線抵抗やトランジスタのしきい値電圧は、製造工程の微小な揺らぎによってわずかに変化する。この差は外観や仕様からは判別できず、再現も困難である。PUFはこの偶然的な差を入力信号に対する応答の違いとして読み出し、装置固有のビット列を生成する。外部から同一の入力を与えても、装置ごとに異なる応答が得られる。

PUFの実装には、SRAMの起動時に現れる初期値を利用する方式や、遅延差を比較する回路を用いる方式などがある。SRAM型では電源投入直後にセルの値が「0」または「1」へ収束する挙動のばらつきを読み取り、遅延型では同一構造の経路を複数用意して伝搬時間の差を測定する。いずれも製造時に生じた物理差をもとに応答が決まり、同一装置では毎回同じ結果が得られるよう誤り訂正や安定化処理が組み合わされる。

PUFの従来方式にない利点は、秘密情報を不揮発性メモリに書き込む必要がない点である。従来のセキュリティトークンセキュリティチップを利用した認証暗号化では、装置内部のフラッシュメモリなどに秘密鍵を格納するが、電圧解析や物理的な探針攻撃によって読み出されるリスクがあった。物理複製困難関数は電源を切ると鍵導出に利用した応答情報は消滅し、電源投入のたびに物理現象から同じ情報が再生成されるため、鍵そのものが存在しない状態を維持できる。

この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
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