読み方 : てんすいてい
点推定【point estimation】
概要
点推定とは、統計学において母集団の未知の値(母数)を、標本から得た一つの数値によって推測する手法。標本平均や標本比率を計算し、それを母集団全体の平均や比率の推定値として扱う。

例えば、ある工場の製品全体の平均寿命を知りたい場合、全数調査は現実的ではない。そこで標本を無作為に抽出し、その平均寿命を計算して母集団の平均寿命の推定値とする。標本から求めた一つの数値をそのまま母数の推定値とみなす考え方で、値の存在範囲を幅で示す「区間推定」(confidence interval)とは対照的である。
点推定に用いる計算式や統計量を推定量、そこから実際に算出された数値を「推定値」と呼ぶ。推定量には「不偏性」や「一致性」、「有効性」といった性質がある。不偏性は推定値に偏りがなく期待値が母集団の統計量に一致する性質である。一致性は標本サイズを大きくすれば推定値が真の母数に近づく性質で、有効性は複数の推定量のうち分散が小さいものを優れているとする考え方である。
点推定の代表的な方法として、「最尤法」と「モーメント法」がある。最尤法は、観測データが得られる確率(尤度)を最大にする母数の値を推定値とする方法で、統計学やデータ分析、機械学習の分野で広く用いられる。モーメント法は標本の積率と母集団の積率を一致させて母数を推定する方法で、最尤法に比べて計算は簡単だが精度の面で劣る場合がある。
点推定は結果を単一の数値で示すため直感的に理解しやすい一方、標本の抽出に伴う誤差やばらつきの大きさを数値自体では表現できない。ある商品の購入者全体の平均年齢を35歳と推定しても、実際の母平均が34歳なのか37歳なのかは、その数値だけでは判断できない。実務上は点推定の値に加えて区間推定による信頼区間を併記することが多く、両者を組み合わせることで推定値の信頼性や誤差の程度も同時に把握できるようになる。
(2026.8.28更新)