読み方 : すいろん
推論【inference】
推論とは?

一般的な推論の技法として、「演繹推論」「帰納推論」「アブダクション」の三種類が知られている。演繹は一般的な前提から個別の結論を導くもので、「すべての人間は死ぬ」「Aは人間である」という前提から「Aは死ぬ」を導く三段論法が典型例である。帰納は複数の事例から一般的な法則を見いだす方法であり、アブダクションは観察された事実に対して最も妥当な説明を推測する方法で、「最善の説明への推論」とも呼ばれる。
ITにおける推論は、大きく二つの文脈で使われる。一つは知識ベース型システムにおける推論であり、「もしAならばBである」という形式のルールを連鎖させて結論を機械的に導出する。この仕組みは「エキスパートシステム」が普及した1980年代に広く採用された。もう一つは機械学習、特に深層学習における推論であり、こちらは大量のデータから学習したパターンをもとに分類や予測、判断などを行う。
機械学習では、推論は「学習」と対になる概念として使われる。学習がデータからモデルを作り出す工程であるのに対し、推論はその完成したモデルに入力データを与えて結果を得る工程を指す。学習には膨大な計算資源が必要となるが、推論は処理能力が限られた機器でも高速に実行できる。スマートフォンの顔認証がカメラに映った顔を識別する処理も、推論の一例である。
大量の文字データで巨大なニューラルネットワークを学習させた「大規模言語モデル」(LLM:Large Language Model)の普及に伴い、回答を出力する前に中間的な思考ステップを生成する「推論モデル」(inference model)と呼ばれる方式も登場した。数学の証明や複雑な問題解析において従来のモデルより正確な結果を示すとされ、複数のAIサービスで採用されている。