読み方 : たんじゅんマルコフかてい

単純マルコフ過程【simple markov process】

概要

単純マルコフ過程とは、次の状態が現在の状態のみによって決まり、それ以前の履歴に依存しないという「マルコフ性」を持つ確率過程の中でも、最も基本的な形式のモデル。時間とともに状態が確率的に変化する現象を表現するための基本的な数学モデルである。
単純マルコフ過程のイメージ画像

確率過程とは、時間の経過とともに確率的に変化するシステムの状態を数学的に記述する枠組みである。その中で「マルコフ過程」(Markov process)は、「次に何が起こるかは、今の状態だけで決まる」という性質を前提とする。過去の状態がどうであったかは、現在の状態に集約されているとみなし、直接的には考慮しない。

この性質を「マルコフ性」または「無記憶性」と呼ぶ。単純マルコフ過程はこの性質を持つモデルの中で、状態の変化が直前(一段階前)の状態のみに依存するものを指す。マルコフ過程には単純でないもの(2段階以上前の状態を参照する)もあり、直前とその一つ前の状態に依存する過程を「2階マルコフ過程」、一般にN段階前までの状態に依存する過程を「N階マルコフ過程」という。

具体的なイメージとして、天気の変化を例に挙げると分かりやすい。「今日が晴れなら明日も晴れる確率が70%、雨になる確率が30%」というように、今日の天気だけを根拠に明日の天気を確率で記述するモデルが単純マルコフ過程である。一週間前の天気や気温の推移といった過去の情報は考慮しない。

状態の種類と時間が離散的(整数のように飛び飛びの値をとる)な場合は「マルコフ連鎖」とも呼ばれ、状態遷移の確率を行列で表した「遷移行列」を用いて計算が行われる。時間が連続的な場合には「連続時間マルコフ連鎖」として扱われ、待ち行列理論などに応用される。

応用範囲は広く、自然言語処理における文章生成モデル、株価や気象の予測モデル、通信ネットワークトラフィック解析、強化学習における状態遷移のモデル化などに活用されている。現代の実用的なAIシステムの基盤となっている大規模言語モデルLLM)も、マルコフ的な次トークン予測を基本的な動作原理としている。

資格試験などの「単純マルコフ過程」の出題履歴

▼ 基本情報技術者試験
令4修12 問3】 表は,ある地方の天気の移り変わりを示したものである。例えば,晴れの翌日の天気は,40%の確率で晴れ,40%の確率で曇り,20%の確率で雨であることを表している。
平28修12 問3】 表は,ある地方の天気の移り変わりを示したものである。例えば,晴れの翌日の天気は,40%の確率で晴れ,40%の確率で曇り20%の確率で雨であることを表している。
平28修1 問2】 次の図は,ある地方の日単位の天気の移り変わりを示したものであり,数値は翌日の天気の変化の確率を表している。ある日の天気が雨のとき,2日後の天気が晴れになる確率は幾らか。
平22秋 問3】 表は,ある地方の天気の移り変わりを示したものである。例えば,晴れの翌日の天気は,40%の確率で晴れ,40%の確率で曇り20%の確率で雨であることを表している。
平21修6 問2】 次の図は,ある地方の日単位の天気の移り変わりを示したものであり,数値は翌日の天気の変化の確率を表している。ある日の天気が雨のとき,2日後の天気が晴れになる確率は幾らか。
この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
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