読み方 : ちゅうしんきょくげんていり
中心極限定理【central limit theorem】

サイコロを1回振った目の出方は「1」から「6」まで均等であり、正規分布とはかけ離れた形をしている。しかし、100回振って平均を求める操作を繰り返すと、得られた平均値の分布は次第に釣り鐘型の正規分布に近づいていく。元の分布が一様分布であっても二項分布であっても、平均を取るという操作を繰り返すことで、最終的に同じ形へ収束する。
この定理が成立するには条件がある。各データが互いに独立していること、分散が有限であること、そして標本の大きさが十分に大きいことである。一般に、サンプル数が30程度を超えると近似の精度が実用的なレベルに達するとされるが、元の分布が極端に偏っている場合はさらに多くのサンプルが必要になる。
この定理は、推測統計の理論的な根拠の一つとなっている。母集団の分布が不明でも、標本平均は正規分布で近似できるため、信頼区間の算出や仮説検定を標準的な手順で行うことができる。世論調査や品質管理、医薬品の臨床試験など、標本から母集団を推定する場面でこの原理が活用されている。
身長や血圧、製品の寸法誤差など、自然現象や工業データが正規分布に近い形を示す理由も、この定理で説明できることが多い。遺伝や製造工程に関わる無数の微小な要因が積み重なって結果が決まる場合、中心極限定理の働きによって分布が自然と正規分布へ収束するためである。