中小受託取引適正化法【取適法】
中小受託取引適正化法とは?

法改正の背景には、近年の急激な物価上昇への対応と賃上げの実現という政策目標がある。人件費や原材料費のコスト上昇分を取引価格に適切に反映させる「価格転嫁」を定着させるには、発注側が受注側に一方的に負担を押しつける商慣習を是正する必要があった。改正に合わせて用語も刷新され、上下関係を連想させる「親事業者」「下請事業者」は、それぞれ「委託事業者」「中小受託事業者」と改められた。
対象となる取引は、物品の製造や修理の委託、ソフトウェアや映像・デザインなどの情報成果物作成委託、運送やビルメンテナンスといった役務提供委託など5種類である。どの事業者間に適用されるかは、取引の内容と、各事業者の資本金額または従業員数によって判断される。従業員数が基準に加わったことで、資本金が少なくても実態として大規模な企業が適用外となる抜け穴が塞がれた。
発注者は委託事業者に対し、委託後直ちに業務内容、代金額、支払期日、支払方法などを書面または電磁的方法で明示する義務がある。代金の支払期日は成果物の受領日から60日以内に設定しなければならず、期日を過ぎた場合は年率14.6%の遅延利息が発生する。長期手形など受注側の資金繰りに負担を与える支払手段についても規制が強化されている。
禁止行為として、受領拒否、代金の減額、返品、買いたたき、購入強制、不当なやり直し要求などが定められている。取適法で新たに禁止対象に加わったのが、価格協議を拒否した一方的な代金決定である。受注側がコスト上昇を理由に価格交渉を求めたにもかかわらず、発注側が協議に応じず価格を据え置く行為が明示的に禁じられた。また、受注側が違反を行政に申告したことを理由に取引を打ち切るといった報復措置も固く禁止されている。
運用は公正取引委員会と中小企業庁が連携して担い、違反が認められた場合は指導や勧告、違反事業者名の公表といった措置が講じられる。申告先には従来の両機関に加え、事業所管省庁の主務大臣も新たに追加された。例えば、運輸業や建設業であれば国土交通大臣にも指導などの権限が与えられている。