読み方 : へいこうシミュレーションほう

並行シミュレーション法【parallel simulation】

概要

並行シミュレーション法とは、監査対象となる業務処理と同じデータを用いて、監査人側で独自に処理を再現し、その結果を本番処理の結果と照合する監査手法。主にシステム監査において内部統制や処理の正確性を検証する目的で用いられる。
並行シミュレーション法のイメージ画像

企業の基幹システムでは、売上計算や在庫管理、給与計算など多様な自動処理が行われている。これらの処理が設計どおり正確に実行されているかを確認するために、監査人は本番環境とは独立した検証用環境や監査用プログラムを用意し、実際に処理に使われた入力データを用いて同様の計算や判定を行う。監査人が得た出力結果と本番システムの出力結果を比較し、差異の有無や原因を分析する。

本番システムの中に監査用のプログラムを組み込む必要がないため、稼働中のシステムに与える影響を最小限に抑えられる。本番環境から独立したプログラムを用いることで、システム担当者が意図的に隠蔽した不正なども発見しやすい。特に、利息計算や複雑な税額計算を行う金融機関のシステムなど、数値の正確性が極めて重要視される分野の監査において効果が大きい。

一方、監査人が独自に処理ロジックを構築する必要があり、対象業務やシステム仕様に関する深い理解が求められる。大量データを扱う場合は検証用環境の整備やデータ抽出の手続きも重要となる。実務上は、すべての処理を検証するのではなく、特に重要度の高い特定の計算ロジックに絞って適用されることが一般的である。

並行シミュレーション法は、テストデータ法やITF法監査モジュール法などと共に、監査にIT技術を活用するコンピュータ利用監査技法(CAAT:Computer Assisted Audit Techniques)の一つに位置づけられる。情報システムのブラックボックス化を防ぎ、情報の信頼性を外部から論理的に証明するための有力な手段として活用される。

この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
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