読み方 : ふせいしれいでんじてききろく
不正指令電磁的記録
概要
不正指令電磁的記録とは、利用者の意図に反する動作をコンピュータに行わせることを目的として作成されたプログラムなどのコンピュータ上の記録物(電磁的記録)を指す法律用語。いわゆるコンピュータウイルスなどのマルウェアを刑事罰の対象とするために日本の刑法に定められた概念である。

2011年の刑法改正により「不正指令電磁的記録に関する罪」が新設された。この改正以前は、コンピュータウイルスを作成・配布する行為を直接処罰する規定が刑法になく、対応に限界があった。改正後は、不正指令電磁的記録の作成・提供・供用・取得・保管が刑事罰の対象となり、作成・提供・供用には3年以下の懲役または50万円以下の罰金、取得・保管には2年以下の懲役または30万円以下の罰金が定められている。
構成要件として、当該プログラムが「人の意図に反する動作をさせるべき不正な指令」を与えるものであることと、それを「正当な理由なく」作成・提供・供用等することが必要とされる。ウイルス対策ソフトの開発やセキュリティ研究を目的とした正当な業務での取り扱いは、この「正当な理由」にあたる可能性があるが、その範囲については解釈の余地があり、実際の適用においては個々の事案の状況が考慮される。
2019年にはWebサイト閲覧者のコンピュータを無断でマイニング(仮想通貨の採掘)に利用するコード(Coinhive)の設置者がこの罪で起訴された事案があり、最高裁は2022年に無罪判決を確定させた。この判決では、当該コードは利用者の意図に基づいて実行されたわけではないが、社会的に許容される範囲内であるとしている。