レトロニム 【retronym】
概要
レトロニム(retronym)とは、既存の概念を新たに登場した概念と区別するために考案された名前。もともとの名前では新しい概念と区別できない場合に与えられることがある。例えば、「電話」はもともと有線式の通話システムを指していたが、電波による無線式の「携帯電話」が新たに普及したことから、従来からある有線の据え置き型の電話機や電話サービスのことを「固定電話」と呼ぶようになった。
また、かつての電話システムではダイヤルを回して番号を発呼する方式で、その方式しかなかったためこれを指し示す名称は存在しなかったが、ボタンを押してトーン信号を発する「プッシュ式」が登場したため、「ダイヤル式」という名称が後から付けられた。
このように、既存の名称が新しい類似概念を含む総称となってしまったり、それ自体を指す名称は無かったが類似概念が登場して区別する必要が新たに生じた場合に、従来からある概念のみを指し示す新しい名前を考案して与えたものをレトロニムという。
IT分野では他にも、「デジタル」に対する「アナログ」、「衛星放送」に対する「地上波放送」、「無線LAN」に対する「有線LAN」、「スマートフォン」に対する「フィーチャーフォン」や「ガラケー」、「RISC」に対する「CISC」、「シリアルATA」に対する「パラレルATA」など、技術革新によって既存方式にレトロニムを与える例が数多くある。
なお、“retronym” という英単語は、「過去の」「古い」などの意味を持つ接頭辞 “retro-” に、「~語」「名前」などの意味を持つ接尾辞 “-onym”を連結した合成語で、日本語には対応する訳語が無いため「レトロニム」とカナ書きして外来語とする。
(2024.8.5更新)