マルチリージョン【multi-region】

マルチリージョンとは?

クラウドサービスにおいて地理的に離れた複数の地域(リージョン)の施設にシステムを分散配置して運用する構成法。可用性の向上や障害対策のために用いられることがある。
マルチリージョンのイメージ画像

リージョン」(region)とは、クラウド事業者が定めた地理的な運用単位であり、独立した電源やネットワーク網を持つデータセンター群を地域ごとにまとめた区分を指す。「東京リージョン」「大阪リージョン」「米国東部リージョン」のように物理的な場所を単位として管理され、各リージョンは互いに独立している。一か所のリージョンだけにシステムを置く設計を「シングルリージョン」、複数のリージョンにまたがるように配置する設計を「マルチリージョン」という。

マルチリージョンが採用される最大の理由は、広域的な障害への備えである。地震や洪水、広域停電、通信障害、戦争といった事態が特定地域で発生した場合、シングルリージョン構成ではサービス全体が停止するリスクがある。複数のリージョンにシステムを分散させておけば、一方で障害が起きても別のリージョンで処理を継続できる。この仕組みは災害対策(DR)や事業継続計画BCP)の手段として活用されている。

障害対応のほかに、応答速度の向上を目的として採用されることもある。インターネット上の通信は機器間の物理的な距離に応じた遅延が生じることが避けられないため、世界各地の利用者に対して最寄りのリージョンからデータを送ることで通信の遅延を抑えられる。また、国や地域によって個人情報や機密データの国外持ち出しを制限している場合があり、法規制への対応としてデータを特定リージョン内で処理する必要から採用されるケースもある。

構成方式としては、常時複数のリージョンを同時稼働させる「アクティブ/アクティブ構成」と、平常時は一方を待機系として置き障害時のみ切り替える「アクティブ/スタンバイ構成」がある。システムの整合性を保つにはリージョン間でデータを同期する必要があるが、物理的な距離があるほど転送に時間がかかるため、更新直後のデータが別リージョンへ即座に反映されない場合もある。即時性と障害耐性のどちらを優先するかを考慮した設計が求められる。

一方、複数リージョンでリソースを稼働させるためコストは増大し、リージョン間のデータ転送にも別途費用が発生する。監視やバックアップアクセス制御といった運用管理も複雑になりやすく、設計や運用を誤るとかえってシステム全体の安定性が下がる場合もある。クラウドの普及以前は遠隔地への自社データセンター構築に多大な初期投資が必要だったが、クラウドサービスの登場によって導入の敷居は大きく下がり、国際的に展開するネットサービスなどで採用が広がっている。

この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
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