ベイジアンネットワーク【Bayesian network】

ベイジアンネットワークは、事象を表すノード(点)と依存関係の方向を示すエッジ(矢印)で構成される。矢印は原因から結果へ向かい、循環しない一方向の構造(有向非巡回グラフ)となる。
各ノードには条件付き確率が設定されており、親となるノードの状態に応じて、そのノードの事象が発生する確率が定義される。親を持たないノードには事前確率が設定される。
一部の変数の値が観測されると、その情報がグラフ内を伝わり、関連する変数の確率が更新される。この処理は「確率推論」と呼ばれ、原因から結果を予測する方向と、観測された結果から原因を遡って推定する方向の両方に利用できる。例えば、医療診断では患者の症状という結果から特定の疾患である確率を推定することができる。
従来のルールベースのシステムは「AならばB」という確定的な処理しか行えなかったが、ベイジアンネットワークは情報が不完全な状況でも確率として判断を導き出せる。変数が増えると計算量は大きくなるものの、直接的に関連する要素の依存関係のみをグラフで整理することで、すべての変数の組み合わせを直接扱う場合より効率的に計算できる。
18世紀の数学者トーマス・ベイズ(Thomas Bayes)の確率論を基礎とし、1980年代以降にジューディア・パール(Judea Pearl)らによって体系化された。コンピュータの処理能力の向上とともに実用化が進み、医療診断や機械の故障診断、金融リスク分析、迷惑メール判定、自然言語処理など様々な分野で利用されている。近年では機械学習と組み合わせてデータからネットワーク構造や確率を自動推定する手法も発展しており、推論過程を解釈しやすい人工知能のモデルとしても活用されている。
(2026.7.9更新)