ヘイトスピーチ【hate speech】
ヘイトスピーチとは?
人種や民族、国籍、宗教、性別、性的指向、障害などの属性を理由として、特定の集団に対して差別や排除、暴力を煽る表現や言動のこと。発言や投稿だけでなく、身振りや記号、掲示物なども含まれる。

個人への誹謗中傷とは異なり、属性を共有する集団全体を標的にする。対象となった人々が社会から孤立したり、不当な不利益を被ったりする状況が生じることに繋がり、社会的な分断を招く行為とみなされる。特定の個人や組織を対象とする名誉毀損や侮辱とは、この標的の範囲において区別される。
インターネットの普及により、ヘイトスピーチはオンライン空間で急速に拡散するようになった。SNSでは匿名性を背景に過激な投稿が行われやすく、検索エンジンやSNSのアルゴリズムが関心を集めやすい刺激的なコンテンツを優先的に拡散する性質を持つため、意図せず憎悪表現に触れる機会も増えている。
法的な扱いは国・地域によって異なる。欧州では歴史的背景から規制が比較的厳しく、ヘイトスピーチを刑事罰の対象とする国も多い。SNS事業者などに違法投稿への対応を義務づける制度も導入されている。アメリカでは憲法による表現の自由の保護が強く、連邦法による規制は存在しない。日本では2016年にヘイトスピーチ解消法が施行されたが、罰則規定を持たない理念法であり、国や自治体に相談体制や啓発活動などを求めるに留まる。一部の自治体では独自の条例によってより実効性を持たせた運用も進んでいる。
IT分野では、プラットフォーム事業者が利用規約に基づいて差別的投稿の削除やアカウント停止を行うことがある。キーワード一致型のフィルタや機械学習を用いた自動検出システムも普及しているが、文脈や皮肉、引用との区別が難しく、誤検知や見逃しが生じるため、人による確認と組み合わせた運用が一般的である。基準の策定は容易でなく、各社の判断にばらつきがある。