プログレッシブエンハンスメント【progressive enhancement】

プログレッシブエンハンスメントとは?

WebサイトやWebアプリケーションを設計する際に、まず誰もが使える最小限の基盤を整え、環境に応じて機能を段階的に追加していく設計思想のこと。
プログレッシブエンハンスメントのイメージ画像

サイトの構造を三層に分けて考える。第一層はHTMLによるコンテンツの骨格で、情報の意味と構造を定義する。第二層はCSSによる視覚的な装飾、第三層はJavaScriptによる動的な操作性である。重要なのは、上位の層が機能しない環境でも、下位の層だけで情報の取得と基本操作が成立するよう設計する点である。JavaScriptが無効であっても、あるいはCSSが適用されなくても、HTMLさえ読み込めれば最低限の内容は伝わるようにする。

この考え方が生まれた背景には、Web利用環境の多様性がある。古いWebブラウザ、低速な通信回線、スクリーンリーダーを使う視覚障害者、JavaScriptを意図的に無効にしている端末など、アクセスの状況は一様ではない。高度な機能を前提に設計すると、対応できない環境ではコンテンツ自体が表示されなくなる恐れがある。プログレッシブエンハンスメントはこうした問題へ対処する設計上の指針として広まった。

対比される概念に「グレースフルデグラデーション」(graceful degradation)がある。こちらは最高水準の環境を基準に設計し、対応できない環境では機能を削って対応する手法である。どちらも多様な環境への対応を目指すが、出発点が異なる。プログレッシブエンハンスメントが最小構成から積み上げるのに対し、グレースフルデグラデーションは最大構成から切り落としていく。

2000年代前半に提唱された概念だが、スマートフォンなどのモバイル端末の普及やWebアクセシビリティへの関心の高まりを受け、現在この考え方は改めて注目されている。通信環境が不安定な地域の利用者や、支援技術を使う利用者への配慮が求められる場面で、また、検索エンジンによるコンテンツ解析のしやすさという観点からも、この設計方針は実効性を持つ。

この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
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