フーリエ変換【Fourier transform】
概要

私たちの身の回りにある音や光、電気信号などは物理的には周期的な「波」の性質を持つが、通常は単一のきれいな波ではなく、様々な周期の波が重なり合った複雑な形をしている。フーリエ変換は、この複雑な波を数値的に解析し、どの周波数(周期の逆数)の波が、どのくらいの強さで含まれているか、という情報に分解する。
例えば、オーケストラの演奏を録音した音声信号は、一見すると周期性の見られない複雑な波形をしているが、数値化してフーリエ変換を施すと、フルートの高い音やコントラバスの低い音がそれぞれの周波数成分として抽出される。ある瞬間に、どのような音がどのような強さで混ざり合っているかを明らかにすることができる。
フーリエ変換の考え方は、19世紀の数学者ジョゼフ・フーリエ(Joseph Fourier)の研究に由来する。彼は、周期的な関数が三角関数の無限級数で表せることを示し、「フーリエ級数」を提唱した。この考え方は周期信号に限らず、非周期信号にも拡張され、連続的な周波数分布を求める積分変換として定式化されたものがフーリエ変換である。
変換前の信号データは横軸が時間の「時間領域」(time domain)で表現されるが、フーリエ変換を行うと、横軸が周波数の「周波数領域」(frequency domain)へと変化する。これにより、特定の高い周波数だけを取り除いたり、音声の中から特定の人の声の成分だけを強調したりといった処理が、数学的に容易かつ正確に行えるようになる。
現代では大量の数値計算はコンピュータで処理されるため、デジタル信号に対して「離散フーリエ変換」(DFT:Discrete Fourier Transform)が用いられることが多い。実務上はさらに計算効率を高めた「高速フーリエ変換」(FFT:Fast Fourier Transform)が広く利用されている。通信、音声処理、画像処理、制御工学など多様な分野で基礎的な解析手段として普及している。