フォルマント【formant】
概要

人の発話では、声帯の振動によって生成された音が声道を通過する過程で、特定の周波数帯域が強められる。この共鳴現象によって生じるピークがフォルマントであり、低い周波数から順に第一フォルマント(F1)、第二フォルマント(F2)…と番号が付けられる。これらの周波数位置は、舌の高さや前後位置、口の開き具合などの調音状態と密接に関係し、異なる母音では異なる配置を示す。
特に、F1とF2の組み合わせが、どの母音であるかを特定する上で決定的な役割を果たすとされる。例えば、口を大きく開ける「あ」の音ではF1が高くなり、舌を前方に突き出す「い」の音ではF2が高くなるといった規則性がある。なお、子音の部分や騒音下ではピークが不明瞭になることが多く、フォルマントが観測しにくくなるとされる。
音声信号の周波数成分を示すスペクトルの起伏をなめらかに結んだ線をスペクトル包絡というが、フォルマントはこの曲線の上で局所的な山として観測される。線形予測分析などの手法を用いることで、声道の共鳴特性をモデル化し、フォルマント周波数や帯域幅を数値として求めることができる。これにより、連続的な音声信号から調音に関わる情報を抽出することが可能となる。