ヒヤリハット【near miss】close call

概要

ヒヤリハットとは、重大な事故や障害には至らなかったものの、一歩間違えれば深刻な被害を招いていた可能性のある出来事や状況のこと。「ヒヤリとした」「ハッとした」という体験を表す言葉を語源とし、安全管理や品質管理の分野で広く用いられている。
ヒヤリハットのイメージ画像

実害は発生していないが、同じ要因や手順のまま業務を続ければ将来的に重大な問題につながりうる事象を指す。工場で機械に手を挟みそうになった、病院で薬剤の取り違えを投与前に発見したといった事例が該当する。IT分野では、本番環境への誤操作を実行直前で思い留まった、権限設定の不備により機密情報が一時的に閲覧可能な状態になっていたといった事象が当てはまる。

ヒヤリハット事例の重要性を裏付ける経験則に「ハインリッヒの法則」がある。1件の重大事故の背後には29件の軽微な事故があり、さらにその背後には300件のヒヤリハット事例が存在するという経験則で、アメリカの損害保険会社に勤務していたハーバート・ウィリアム・ハインリッヒ(Herbert William Heinrich)が1930年代に提唱した。この考え方に基づけば、小さな異常や兆候の段階で原因を特定し対策を講じることが、重大事故の予防につながる。

企業などの組織では、従業員からヒヤリハット事例を収集・分析する制度を設けることがある。報告された内容は組織全体で共有され、作業手順の見直しや教育の改善、システムや設備の改修などに活用される。この取り組みが定着するかどうかは、当事者が責任追及を恐れずに申告できる組織文化があるかどうかに左右される。継続的な改善に成功している組織では、ヒヤリハット報告を人事評価や懲戒の対象とせず、安全性向上のための情報源として扱う方針をとっている。

(2026.6.13更新)
 
この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
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