ヒステリシス【hysteresis】

概要

ヒステリシスとはある系の状態が現在の入力だけでなく、それまでの変化の履歴によって決まる現象のこと。同じ入力を与えても、直前の状態によって異なる出力が得られる。
ヒステリシスのイメージ画像

電子回路やセンサーでは、入力値がある閾値を超えると出力が切り替わるが、ヒステリシスを持つ回路では、出力がオンからオフに切り替わるときの閾値と、オフからオンに切り替わるときの閾値が異なる。つまり、入力がどちらの方向から閾値に近づくかによって、出力が変化するタイミングが変わる。

この2つの閾値の間は「不感帯」と呼ばれ、入力がこの範囲内で変動しても出力は変化しない。入力信号にノイズが混ざっていると、閾値付近でオンとオフが短時間に繰り返される「チャタリング」(chattering)現象が発生することがあるが、ヒステリシスを持たせると入力が閾値を超えた瞬間に次の閾値が切り替わるため、チャタリングが起こらない。コンパレータ比較器)をはじめ、シュミットトリガ回路などに用いられている。

コンピュータや組み込み機器では、温度制御やファンの回転制御、電源管理、スイッチ入力の処理など様々な用途にヒステリシスが応用されている。例えば、CPUの冷却ファンは、温度が閾値付近でわずかに上下するたびに起動と停止を繰り返すと騒音や部品の摩耗に繋がるため、起動温度と停止温度を別々に設定することが多い。エアコンやサーモスタットが設定温度より少し高くなったら稼働し、少し低くなったら停止する仕組みも同様である。

もとは物理学、とりわけ電磁気学の用語で、強磁性体の磁場と磁化の関係として知られる。磁場をかけて磁化した鉄片は、磁場を取り去っても磁化が残る。磁場の強さと磁化の度合いをグラフに表すと、往路と復路が異なる経路を描いて閉じたループ(ヒステリシスループ)を形成する。この残留磁化は磁気記録媒体の動作原理としても応用されている。経済学の分野でも同じ用語が使われ、景気や相場が大きく変動した後に元の水準に戻りにくい長期停滞現象を指す。

(2026.7.16更新)
 
この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
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