パワー半導体【power semiconductor device】
パワー半導体とは?

一般的な半導体製品は信号処理が目的のため、内部を流れる電気は信号を伝送するための低電圧の小さな電流に限られるが、パワー半導体では機器の駆動に必要な電気の伝達自体が目的であり、高電圧・大電流に耐えられる素子や回路が用いられる。
数十ボルトから数千ボルト、数アンペアから数百アンペアといった大きな電力を扱う設計となっている。損失を抑えるためオン抵抗の低減やスイッチング時の発熱対策が重視され、放熱板や専用パッケージと組み合わせて使用されることが多い。過電圧や過電流に耐えるための構造や保護回路が組み込まれる場合もあり、信号処理用の半導体とは設計思想が異なる。
素子の種類としてはダイオード、トランジスタ、サイリスタなどがあり、用途に応じて選択される。ダイオードは電流の一方向通過に利用され、整流回路やフリーホイール用途に用いられる。トランジスタではMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)やIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が広く使われ、スイッチング電源やインバータ回路で電力の断続制御を行う。サイリスタは高電圧・大電流の制御に適し、電力変換設備や産業用機器に採用されることが多い。
材料面では、信号処理用の半導体と共通のシリコン(Si)に加え、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)といったワイドバンドギャップ半導体の採用が広まっている。これらはシリコンより高温・高電圧環境での動作に優れ、電力損失が小さいため、装置の小型化や省エネルギー化に寄与する。
パワー半導体の応用範囲は広く、電気自動車のモーター駆動システム、太陽光・風力発電の電力変換装置、鉄道車両のインバータ、産業用ロボットの駆動回路など、現代の電気・電子システム全般にわたる。家電製品のエアコンや電子レンジにも組み込まれており、日常生活との接点も少なくない。