パストレーシング【path tracing】
パストレーシングとは?
3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)のレンダリング手法の一つで、光の振る舞いを物理的に再現し、写真に近いリアルな映像を生成するもの。映画制作、ゲーム、建築可視化などの分野で利用されている。

現実世界では、光源から放たれた光が物体の表面で反射・屈折を繰り返しながら人間の目に届く。パストレーシングはこの過程を逆方向にたどる手法で、カメラ(視点)から仮想的な光線を放ち、物体に当たって跳ね返りながら最終的に光源へ至るまでの経路を計算する。この逆向きの追跡により、実際には目に届かない光線の計算を省略でき、処理を効率化できる。
光線が物体に当たると、素材の性質に応じて反射・屈折の方向が決まる。この連鎖を繰り返すことで、鏡面への映り込み、透明物体の屈折、柔らかい影、間接照明によって色がにじむカラーブリーディングといった複雑な現象が自然に描写される。従来のラスタライズ法でこれらを表現するには追加処理が必要だったが、パストレーシングでは物理法則に従って自然に再現される。
この手法はレイトレーシングを発展させたもので、一本の光線だけでなく多数の光線を確率的にサンプリングして平均を取ることで、より正確な光の分布を求める。サンプル数が多いほど画質は上がるが、計算量も増えるため、かつては映画のCGやプリレンダリング映像など、時間をかけて処理できる用途に限られていた。
近年はGPUの性能向上と、AIを用いたノイズ除去技術の普及により、ゲームなどリアルタイム映像への応用が進んでいる。レイトレーシング専用の演算回路を搭載したGPUでは光線の衝突判定を高速に処理でき、Unreal Engine 5などのゲームエンジンにも統合されている。映画品質に近いグラフィックスをリアルタイムで描画できる環境が整いつつある。