ハプティクス【haptics】

概要

ハプティクスとは、触覚を通じて情報を伝達する技術の総称。振動や力、動きといった物理的な刺激を利用者に与えることで、デジタル機器の操作感や仮想空間における存在感を、皮膚感覚を通じて擬似的に再現する仕組みを指す。
ハプティクスのイメージ画像

主に、振動モーターやリニアアクチュエータを用いて皮膚に刺激を与える方式と、モーターやアクチュエータを通じて物理的な反力を提示する力覚提示方式がある。前者は通知やボタン操作のフィードバックに多く用いられ、後者は遠隔操作ロボットなど精密な操作感の再現が求められる分野で利用される。

身近な例としてはスマートフォンやゲームコントローラーなどが挙げられる。画面上のボタンを操作した際に、あたかも物理的なスイッチを押し込んだような微細な振動を返す機能が該当する。単に震えるだけでなく、振動の強弱や周期を精密に制御することで、ザラザラとした質感や、カチッとしたクリック感など、多様な触感を作り出すことが可能となっている。

VRARの分野では、専用のグローブやスーツを着用することで、仮想空間内の物体に触れた際の反発力や、物体の硬さ、冷たさといった感覚をフィードバックすることができる。視覚と聴覚だけでは得られない深い没入感を提供し、医療現場における手術シミュレーションや、遠隔地にあるロボットを操縦する技術など、高度な専門領域にも応用されている。

ユーザーインターフェース設計においては、視覚情報に頼らず操作結果を把握できる点が重要である。例えば、画面を見ずに文字入力を行う際の振動フィードバックや、自動車のタッチパネル操作時に物理ボタンに近い感触を与える仕組みなどが挙げられる。視覚障害者支援技術としても応用され、点字ディスプレイや触覚地図などの開発が進められている。

近年では、空気圧や静電気を利用して、何もない空中に触感を生み出す非接触型のハプティクス技術も研究されている。デジタル情報の「手触り」を実現するハプティクスは、人間と人工システムの関わりをより自然で豊かなものにするための基盤技術として開発と応用が進められている。

この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
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