ツェナーダイオード【Zener diode】
ツェナーダイオードとは?

通常のダイオードは電流を一方向にのみ流す素子であり、逆方向への電流は遮断される。ツェナーダイオードは、逆方向の電圧を徐々に高めていくと、ある値を境に電流が急激に流れ始める。これを「降伏」(ブレークダウン)と呼ぶ。
一般のダイオードでは過大な電流が発熱や破損を招くが、ツェナーダイオードはこの降伏状態でも素子が壊れないよう内部構造が最適化されており、安定した動作を継続できる。降伏が生じる電圧を「ツェナー電圧」と呼び、製品ごとにあらかじめ設定されている。
ツェナーダイオードは降伏後に電流が変化しても両端の電圧がツェナー電圧にほぼ固定される特性がある。入力電圧が変動しても、接続する負荷が変わっても、出力電圧はほとんど動じない。この「定電圧特性」を利用して、後段の回路に安定した電圧を供給する「ツェナーレギュレータ」が構成される。使用時には直列に抵抗器を接続して電流を制限するのが基本であり、これを省くと発熱や破損の原因となる。
降伏の物理的な仕組みは、ツェナー電圧の高低によって異なる。低電圧域では電子がエネルギー障壁をすり抜けるトンネル効果が主に働き、高電圧域では加速された電子が次々と他の電子を弾き出す雪崩現象(アバランシェ効果)が支配的になる。実際にはこの両者が混在することも多い。温度変化によってツェナー電圧がわずかに変動するため、精度が求められる回路では温度特性の考慮も必要である。
ツェナー電圧は製品によって数ボルトから数十ボルトまで設定されており、用途に合わせて選択する。センサーやマイコンへの電源供給、過電圧から回路を保護する保護回路、基準電圧の生成など、電子機器の様々な場面で活用されている。集積回路(IC)内にも同等の機能が取り込まれているが、小型・低コストで定電圧動作を実現できるため単体部品(ディスクリート半導体)としての需要も引き続き根強い。