ステルス型ウイルス【stealth virus】
概要

代表的な手口として、感染ファイルの実行中だけファイルからコードを消去し、終了時に再びメモリ上のコードを書き出すものがある。ファイルサイズや更新日時を感染前のまま返す方法も知られ、いずれもスキャン時に変化が見えにくい点を悪用している。
このほか、オペレーティングシステム(OS)のファイル一覧やプロセス一覧の表示処理に介入し、自身の情報を表示させない手法もある。rootkitはこうした隠蔽に用いられる代表的な技術で、システムへの問い合わせ結果を操作し、ファイルや実行中のプロセス、レジストリの記録などを改竄・隠蔽する。感染後の通信をTLSで暗号化し、ネットワーク監視による検知を逃れる例も増えている。
ブートセクタウイルスも歴史的にはステルス型の例である。ハードディスクのMBR(マスターブートレコード)やブートセクタに感染し、起動時には正規のコードを呼び出すように振る舞いを偽装することで、感染に気付かれにくくする。ただし、現在では対策ソフトの検知技術の進歩によって、この手法は隠蔽性の高い脅威とは見なされず、一般的なマルウェアの一種として扱われることが多い。
近年ではファイルとして保存せずメモリ上でのみ動作する「ファイルレスマルウェア」や、パソコンに標準搭載されたコマンドや正規ツールを悪用して発見を逃れる「環境寄生型攻撃」(LotL:Living off the Land)といった手法も使われている。ファイルの内容を検査するだけでは発見しにくく、システム内の正規の仕組みを装う点で、従来のウイルスとは異なる警戒が求められる。
現在のセキュリティ製品では、ファイルの内容に加えてプロセスの挙動やメモリ上の動作、システムの変更履歴などを組み合わせて不審な活動を検出する方式が一般的である。「EDR」(Endpoint Detection and Response)やAIによる振る舞い検知などの動的な解析技術も普及している。