スイスチーズモデル【Swiss cheese model】
スイスチーズモデルとは?
事故やミスは単一の失敗ではなく、複数の防御層に存在する穴が偶然一直線に並んだときに発生するという考え方。1990年代にイギリスの心理学者ジェームズ・リーズン(James Reason)が提唱した。

スイスチーズモデルでは、組織や系統が持つ複数の安全対策を、穴の空いたチーズの薄切りに見立てる。それぞれのチーズの層は、規則、手順、設備、人員配置といった個々の防御策に対応し、各層にはそれぞれ異なる位置に穴(弱点や欠陥)が存在する。通常、ある層の穴は別の層によって塞がれるため、危険が外部まで貫通することはない。
事故が起きるのは、複数の層にある穴の位置が偶然一致し、発生した問題が途中の層でせき止められることなく系統全体を貫いてしまう時である。この考え方は、事故の原因を特定の個人の過失に帰するのではなく、系統全体の構造的な問題として捉える点で、当時の安全管理の思想に転換をもたらした。
安全対策上の「穴」は大きく分けて、設計上の欠陥や組織の方針といった「潜在的要因」(latent conditions)と、現場での判断ミスや操作誤りといった「能動的失敗」(active failures)の二種類に分類される。能動的失敗は行動として現れるため認識しやすいが、潜在的要因は日常では見えにくく、長期間にわたって蓄積されるため、発見と是正が難しい性質を持つ。
このモデルは医療、航空、原子力、食品衛生など、安全管理が求められる幅広い分野で参照されている。例えば、航空業界では操縦士のミス、機器の誤作動、管制の見落としといった複数の要因が重なることで重大事故が生じると理解され、単一の原因探しよりも系統全体の見直しが促される。