読み方 : サンプルアンドホールドかいろ
サンプル&ホールド回路【sample and hold circuit】S/H回路
サンプル&ホールド回路とは?

時間経過によって絶え間なく変化し続けるアナログ信号をデジタルデータに変換するには、特定の瞬間の値を正確に読み取る必要がある。しかし、A/D変換器が値を数値化するには、わずかながら時間がかかり、その間の信号の変化によって変換結果に誤差が生じてしまう。サンプル&ホールド回路はこの問題を解決するために用いられる仕組みで、信号の値を一瞬だけ取り込み(サンプリング)、変換が終わるまでその値を固定しておく(ホールド)回路である。
基本的な回路の構成は、入力スイッチとコンデンサ、出力バッファから成る。サンプリング時にスイッチが閉じると、入力電圧がコンデンサに充電される。続いてスイッチが開くと、コンデンサに蓄えられた電荷がその電圧を維持し、出力バッファが安定した状態で後段の回路へ伝える。スイッチ素子にはトランジスタやアナログスイッチが用いられる。
実際の回路では、ホールド中にコンデンサの電荷が少しずつ漏れて電圧が低下する「ドループ」(droop)や、スイッチの開閉時に生じる「ペデスタル誤差」(pedestal error)と呼ばれる誤差が精度に影響する。保持時間が長くなるほど、これらの影響は大きくなるため、高精度な用途では部品の選定や回路設計に工夫が必要となる。サンプリング間隔や充電にかかる時間も、応答速度や精度を左右する要素である。
サンプル&ホールド回路は音声処理、測定機器、通信システムなど幅広い分野で使われている。近年の集積回路ではA/D変換器の内部にこの機能が組み込まれており、独立した部品として意識されることは少なくなっているが、アナログ信号をデジタル処理へ繋ぐ上で今も欠かせない仕組みである。