クイックフォーマット【quick format】

ストレージ装置の記憶媒体(メディア)は、データの記録を開始する前に特定のファイルシステムの記録形式を整える「フォーマット」(format)という操作が必要になる。通常のフォーマット(フルフォーマット)では、媒体全体に対して読み書きのテストを行い、正常に読み書きできない不良セクタがないかを確認しながら、既存データを上書きする。この処理は大容量のメディアほど時間がかかり、数時間を要することもある。
一方、クイックフォーマットはこうした検査と上書きを省き、ファイルの場所や名前を記録した管理情報(ファイルシステムの目次にあたる領域)だけを初期状態に書き直す。実際にデータが記録されている広大な記憶領域に対しては何の操作も行わないため、容量に関わらず長くても数十秒程度で処理が終わる。
クイックフォーマット後は過去に記録されたデータがメディア上に物理的に残り続ける点に留意が必要である。管理情報が失われることでコンピュータからは空き領域として扱われるが、データ復元ソフトを使えば以前のファイルを読み出せる場合がある。個人情報や機密データが含まれる装置やメディアを廃棄・譲渡する用途には適さない。データを完全に消去したい場合は、全領域を上書きするフルフォーマットや専用の消去ソフト、あるいは物理的な破壊が必要になる。
クイックフォーマットは、WindowsやmacOSの標準機能として提供されており、新しい装置やメディアをすぐに使い始めたい場面や、正常に動作しているメディアを手早く初期化したい場面で適している。ただし、不良セクタの検出も行われないため、動作が不安定なメディアや長期間使用した装置に対してはフルフォーマットで状態を確認するほうが安全である。