アフォーダンス【affordance】
概要

この概念はもともと、アメリカの心理学者ジェームズ・ギブソン(James J. Gibson)が1979年に提唱した生態心理学の用語に由来する。ギブソンは、生物が環境から「行為の可能性」を知覚するという考え方をアフォーダンスと呼んだ。
例えば、平らな面は「乗れる」、くぼみは「掴める」といった知覚が、生物と環境の関係から自然に生まれるという考え方である。その後、認知科学者ドナルド・ノーマン(Donald A. Norman)が著書「The Design of Everyday Things」(邦題:誰のためのデザイン?)の中で、この概念をデザイン分野に応用し、製品やインターフェースの設計における重要な指針として広めた。
デザインの文脈では、利用者が提示された表現によって「知覚されたアフォーダンス」が重要となる。利用者がある要素を見たときに「これはこう使うものだ」と直感的に理解できるかどうかが焦点となる。ボタン状の突起があれば押したくなり、取っ手があれば引きたくなるように、形や見た目が行動を示唆する設計がその例である。
WebページやモバイルアプリなどのUIデザインにおいては、クリックできる要素をボタン状に見せる、リンクに下線を引く、スライダーに溝を設けるといった表現がアフォーダンスを活用した設計として挙げられる。こうした視覚的な手がかりが不足すると、利用者は操作方法を推測するために余分な認知的負荷を強いられることになる。
なお、アフォーダンスと対で語られる概念に「シグニファイア」(signifier)がある。シグニファイアとは「知覚されたアフォーダンス」を本来のアフォーダンスと明確に区別するためにノーマンが後から命名した用語で、利用者に特定の行動を促すラベルや記号などの「合図」を指す。アフォーダンスが物の性質そのものに宿るのに対し、シグニファイアは人により意図的な設計行為によって付加された情報である点で区別される。