NTFS 【NT File System】
概要
NTFS(NT File System)とは、Windows標準のファイルシステムの一つ。ストレージ(外部記憶装置)内部を管理し、ファイルやディレクトリ(フォルダ)を格納する。Windows NTで新たに導入されたためにこのように呼ばれており、それまで標準だった「FAT16」や「FAT32」に替わって標準的に利用されるようになった。ストレージ上に作成されたボリュームをクラスタと呼ばれる単位で区画分けし、制御情報を記録する領域を設けてファイルやディレクトリを作成できるようにする。クラスタサイズ(アロケーションユニットサイズ)は512バイトから64kB(KiB)まで選択することができる。
クラスタが小さいほど細かいファイルを格納した際の無駄を減らすことができ、大きいほど大容量の装置を扱うことができる。管理できる最大のボリュームサイズはクラスタサイズ次第で、512バイトの場合で16TiBまで、64KiBの場合で256TiBまでとなる。最大ファイルサイズはボリュームサイズと同じである。
ファイルやディレクトリについての情報(メタデータ)を保存するための「フォーク」あるいは「代替データストリーム」と呼ばれる仕組みに対応しており、ファイルのデータ本体と結びつけて、ファイルについての属性情報やアクセス権、サムネイル画像などの情報を格納できる。
ファイル名・ディレクトリ名
ファイル名やディレクトリ名には、日本語などを含むUnicode文字を255文字まで付けることができる。内部的には大文字と小文字は区別して保存されているが、サブシステムによってこれを区別するか同一視するか選択することができ、Win32など通常使用されるシステムでは同一視される。
MS-DOSや初期のWindowsとの互換性のため、これらのシステムの制限である「8.3形式」(ファイル名本体8文字まで+拡張子3文字まで)のファイル名に矛盾なく短縮する機能を持っているが、近年のWindowsではデフォルトでオフに設定されることが多く、次第に使われなくなりつつある。
データ圧縮
ファイルごとあるいはボリューム丸ごとの透過的な圧縮に対応しており、指定すると書き込み時にシステム側で自動的に圧縮、読み込み時に自動的に展開される。利用者やアプリケーションは意識したり特別に対応する必要はなく、非圧縮時と同じように操作できる。
データ圧縮機能とは別に、長い領域が空白(0で埋まっている)になっている大きなサイズのファイル(スパースファイル)を保存する際、空白が連続する部分の保存を省略する(当該部分に内容が書き込まれた時点で保存領域を用意する)機能があり、記憶容量を節約することができる。
高い安定性
ファイルの更新を監視して変更履歴を記録し、不意な電源断などでファイルシステムの記録状態に矛盾が生じた際に記録をたどって修復する「ジャーナリングファイルシステム」としての機能を持つ。データ本体のバックアップは行わず、失われたデータを復元できるわけではない。
「VSS」(Volume Shadow Copy:ボリュームシャドーコピー)機能を使用すると、ある時点でのファイルシステム内の状態を丸ごと写し取ったスナップショットを作成することができ、データの喪失や破損時に特定時点の状態に巻き戻すことができる。
破損して読み書きできなくなった不良セクタを発見すると自動的に別の領域を代替として設定し、破損領域へのアクセスを自動的に誘導してくれる。不良セクタや記録内容の矛盾の検知・修正はドライブのエラーチェック機能やchkdskコマンドで明示的に実行することもできる。
セキュリティ機能
ファイルごと、あるいはディレクトリごとにアクセス制御リスト(ACL:Access Control List)方式のアクセス権を設定でき、システムに登録された利用者や利用者のグループごとに細かくアクセス権を設定できる。
ファイルへのアクセスを記録して後から追跡することができる監査ログ機能もある。ファイルごとあるいはボリューム全体の透過的な暗号化を指定することができ、記録時に暗号化されたデータを書き込むことで、盗難などによる外部からの不正な読み出しを防ぐことができる。
歴史
一般向けのWindowsがWindows 9x系(95/98)、業務用やサーバ用のWindowsがWindows NTとして別系統だった時代に、Windows NT系列の標準のファイルシステムとして開発された。最初のバージョンは1993年にWindows NT 3.51の一部として提供された。
Windows 2000およびWindows XPで全体がNT系列に統合されると、以降はWindowsの標準ファイルシステムの一つとして、主にハードディスクやSSDなど本体内蔵の固定系のストレージ装置に標準で適用されるようになった。現在ではLinuxやmacOSなどWindows以外のOSでも追加のソフトウェアを組み込むことでアクセスできるようになっている。
一方、CDやDVDなどの光学ディスク、USBメモリ、メモリーカードなどWindowsパソコン以外の機器で使用される可能性のある可搬型の媒体では基本的に使用されず、FAT32やexFAT、あるいは媒体規格などで定められたフォーマットが用いられることが多い。
関連用語
他の辞典による解説 (外部サイト)
この記事を参照している文書など (外部サイト)
- 大阪医科大学医師会会報 第39号「ファイル名の長さ
」(PDFファイル)にて引用 (2013年3月)