MIMO 【Multiple Input Multiple Output】
概要
MIMO(Multiple Input Multiple Output)とは、無線通信を高速化する技術の一つで、送信側と受信側がそれぞれ複数のアンテナを用意し、同時刻に同じ周波数で複数の異なる信号を送受信できるようにするもの。無線LAN(Wi-Fi)などで実用化されている。送信側の機器も受信側の機器も、数本のアンテナを少しずつ離して設置しておく。送信側からは各アンテナで異なる信号を送信するが、同時刻に同じ周波数で同時に送信するため、受信側の各アンテナにはそれらが合成された波形が届く。送信側と受信側の各アンテナ間の位置関係や距離はそれぞれの組み合わせごとにわずかずつズレているため、合成された送信波は受信側の各アンテナで同一ではなく、少しずつ異なった波形となって届く。
通信を行う機器間は通信開始前にあらかじめ各アンテナ間でどのように電波が届くかを測定し、アンテナの組み合わせごとに特性値を決定しておく。これは(送信アンテナ数)×(受信アンテナ数)の行列として表される。受信した合成信号の列に特性値の行列から求めた逆行列を乗算すれば、各送信アンテナが発した信号を取り出すことができる(実際にはこれ以外にも様々な復調方式がある)。
送信側と受信側が2本ずつアンテナを用意すれば、同じ周波数帯を用いて2本の異なる伝送経路を形成することができる。アンテナの本数を増やせばそれだけ多くの経路を作り出すことができ、限られた周波数帯で効率的に伝送速度を向上させることができる。
MIMOの構成は送信側と受信側のアンテナ数を組み合わせて「4×4 MIMO」「8×8 MIMO」のように表記する。通常は両者が同じ本数で運用されるが、携帯電話と基地局のように機器の資源や制約に大きな開きがある場合には「2×4 MIMO」のような非対称の構成が用いられることもある。その場合の伝送経路の数は少ない方のアンテナ数によって規定される。
信号の復調のための行列演算の計算量はアンテナの組み合わせの数に比例して増えるため、8本の場合(8×8)は2本の場合(2×2)に比べ伝送速度は4倍だが計算量は32倍に増大してしまう。あまり多いアンテナ本数のMIMOは信号処理の負荷が大きいため、実用上は8×8 MIMO程度が上限とされることが多い。
関連用語
他の辞典による解説 (外部サイト)
- ウィキペディア 「MIMO」
- 日経 xTECH Networkキーワード 「MIMO」
- ケータイ用語の基礎知識 「MIMO」
- マイナビニュース いまさら聞けないスマートフォン用語 「MIMO」
- TOUCH&SLIDE 用語集 「MIMO」
- ITパスポート用語辞典 「MIMO」
- TechEyesOnline 計測関連用語集 「MIMO」
- ソフトバンクニュース 1分で分かるキーワード 「MIMO」
- Gartner Information Technology Glossary (英語) 「Multiple Input/Multiple Output」
- PC Magazine (英語) 「MIMO」
この記事を参照している文書など (外部サイト)
- 計測自動制御学会「計測と制御」48巻7号「計測制御のための無線通信技術の現状と展望
」(PDFファイル)にて引用 (2009年7月)